PAGE TOP

医薬品の品質を保ったまま流通させるには、GDPガイドラインに沿った倉庫づくりが不可欠です。倉庫建設の勘所について解説します。

医薬品のGDP倉庫とは

GDP(Good Distribution Practice)とは、医薬品の品質を製造後から医療機関や薬局に届くまでの間、適切に維持するための流通管理の考え方です。
日本では厚生労働省が公表した「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」がその指針となっており、保管・輸送・受発注といった流通プロセス全体で品質と完全性を守ること、そして偽造医薬品が正規の流通網に紛れ込むのを防ぐことを目的としています。

また、よく混同されるのがGMP(Good Manufacturing Practice)です。GMPは製造工程で医薬品を承認内容どおりに製造するための管理体系であり、対象は主に製造所内の工程や試験に限定されます。
一方GDPは、すでに出荷判定を終えた製品を、倉庫での保管から配送に至るまで品質を損なわず届けるための仕組みです。つまり両者は「作る品質」と「届ける品質」を担う、役割の異なる管理体系だといえます。
GDP倉庫を建てる際は、この境界を理解したうえで設計に落とし込むことが出発点になります。

医薬品の適正流通(GDP)
ガイドラインで
倉庫に求められること

医薬品を適切に保管できる
施策・設備を整える

GDPガイドラインは、倉庫そのものが清潔で乾燥しており、必要な温度帯を維持できることを求めています。加えて、十分な保管容量や照明、換気を確保し、受入・出荷スペースは天候の影響を受けにくい構造にすることも重要です。
こうした基本設備が整っていなければ、医薬品の品質を維持する基盤の構築が困難になります。設計段階から「保管に適した環境か」を軸に検討する姿勢が求められます。

保管品の状態に応じて
エリアを区分する

倉庫内では、入荷検収待ち、合格品、隔離品、返品、回収品、廃棄待ちなど、医薬品の状態ごとにエリアを明確に分ける必要があります。状態が混ざったまま保管すると、誤って出荷してはいけない製品を出してしまうリスクが高まります。物理的な仕切りだけでなく、システム上でロケーションと品質ステータスを紐づけて管理する方法も有効です。誤出荷を防ぐ仕組みづくりが、区分管理の本質だといえるでしょう。

温度・湿度などの保管環境を
管理する

医薬品は品目ごとに定められた温度条件で保管する必要があり、常温・冷所といった表示条件に沿った環境を整えなければなりません。重要なのは、稼働前に温度マッピングを行い、倉庫内のどこに熱がこもりやすいか、逆に冷えやすい場所はどこかを把握することです。その結果をもとに日常的な監視ポイントを絞り込むことで、効率的にリスクの高い箇所を監視する体制を構築できます。

温度管理機器の
校正・警報システムを整える

温度計やセンサーは、精度が保たれていなければ本来の役割を果たせません。国が定める計量標準へトレーサビリティが確保された校正を定期的に行い、測定値の信頼性を担保することが求められます。
また、温度が許容範囲を外れた際には速やかに担当者へ知らせる警報の仕組みも重要です。メールと電話といった複数の通知経路を用意しておくと、異常への気づきが遅れる事態を防ぎやすくなります。

適格性評価・バリディーション
を行う

倉庫の設備が「設計どおりに設置され、正しく機能し、実際の運用でも性能を発揮できるか」を、稼働前にひとつずつ確認する作業が適格性評価です。据付確認(IQ)、機能確認(OQ)、性能確認(PQ)という流れで進めるのが一般的で、設備の大きな変更があった際には再評価も必要になります。こうした積み重ねが、日々の運用における品質保証の確実性につながります。

手順・作業内容を文書化し
記録を残す

どれだけ優れた設備を導入しても、運用の手順が曖昧であれば品質の維持は困難です。入荷、保管、出荷、返品、逸脱対応といった業務ごとにSOP(標準作業手順書)を整備し、実際の作業結果を記録として残すことが求められます。記録には承認者や日付、変更理由などを明記し、後から経緯を追跡できる状態にしておくことが、GDP運用の信頼性を支えます。

医薬品向けGDP倉庫建設の
ポイントまとめ

医薬品を保管する倉庫では、品質を維持したまま適切に流通させるため、GDP(Good Distribution Practice:適正流通)を踏まえた施設・設備計画が重要です。

  • 取り扱う医薬品の保管条件をもとに、必要な温度帯や保管エリアを計画する
  • 温度逸脱などの異常を早期に把握し、対応できる監視・警報体制を整える
  • 温度マッピングや適格性評価を見据えて、設備やセンサーの配置を検討する
  • 停電や冷却設備の故障時にも品質への影響を抑えられるバックアップ体制を検討する
  • 医薬品への不正なアクセスを防ぐため、入退室管理やセキュリティ設備を計画する
  • 完成後の点検・校正・メンテナンスまで行いやすい施設にする

医薬品向けの倉庫では、単に必要な温度まで「冷やす」だけでなく、GDPガイドラインを踏まえ、保管中の品質を維持・確認できる環境を継続して運用できることが重要です。取り扱う医薬品や保管条件に合わせて、建物・冷却設備・監視システム・非常時対策まで一体的に検討しましょう。

GDP倉庫を建設する前に
整理しておきたいこと

保管する医薬品と保管条件
を確認する

倉庫を設計する前に、取り扱う医薬品の品目や剤形、それぞれの承認・表示上の保管条件を洗い出しておく必要があります。常温品なのか冷所品なのか、湿度に配慮が必要な製品はあるかといった情報が曖昧なまま設計を進めると、後から温度帯の変更や設備の追加工事が必要になりかねません。製品ごとの条件を一覧化し、設計担当者と共有しておくことが第一歩です。

必要な温度帯と保管量を整理する

保管条件が整理できたら、次はどの温度帯にどれだけの在庫量が必要になるかを見積もります。平常時の在庫だけでなく、季節による需要の波や将来的な取扱品目の増加も見込んでおくと、容量不足による後々の増設リスクを減らすことができます。冷所エリアなど特殊な温度帯は面積あたりのコストも高くなるため、適切な規模感を早い段階で固めておくことが大切です。

入荷・保管・ピッキング・出荷
の流れを整理する

医薬品がトラックで到着してから出荷されるまでの動線を、あらかじめ具体的に描いておくことも欠かせません。入荷検収、保管棚への格納、ピッキング、検品、出荷準備といった各工程がスムーズにつながるレイアウトであれば、作業ミスや取り違えのリスクを抑止できます。
動線設計は建物の配置そのものに直結するため、業務フローの整理は設計初期に済ませておきたい作業です。

特殊な管理が必要な医薬品の
有無を確認する

麻薬や向精神薬、放射性医薬品などを取り扱う場合は、通常のGDP要求に加えて個別の法令に基づく施錠設備や区画、遮蔽といった対応が必要になります。
こうした特殊品の有無を後から把握すると、設計のやり直しにつながりかねません。計画の初期段階で取扱品目を確認し、該当する規制がある場合は専用のスペースや設備を最初から設計に織り込んでおくことが望ましいでしょう。

監修
冷凍冷蔵倉庫の建設パートナー株式会社澤村
監修:株式会社澤村

滋賀県を拠点とし、70年に渡る実績を持つ澤村は、省エネ・高断熱構造技術を備えた総合建設会社です。
冷凍冷蔵倉庫建設において、システム建築をベースとした効率的な建設プロセスで高品質・省エネ・低コストを実現。顧客の多様なニーズに対して、商材ごとに的確な環境をつくり、機能性だけでなく、将来を見据えた柔軟な対応を行っています。提案・設計・施工・改修まで専門チームがワンストップで対応、冷凍冷蔵倉庫にとって重要な「止まらない仕組み」を提供しています。